わたしたちのお口に棲む細菌は1000種類以上。
さらには、きれいに歯みがきしても100億個が棲み、雑だとなんと1兆個も!?
切っても切れない細菌との縁。上手に付き合う作戦が必要です!
◆親戚づらして悪だくみをするトレポネーマ菌
トレポネーマ菌はらせん状の細菌スピロヘータに属する細菌です。
トレポネーマ菌にはさまざまな病原菌をもつ種類がおり、いずれもたいへんなクセ者ですが、今回はそのなかでも、悪玉歯周病菌の総師、ジンジバリス菌とタッグを組む口腔細菌の「トレポネーマ・デンティコーラ」を取り上げたいと思います。
トレポネーマ菌は回転する糸状の細菌で、菌体に絡みつく軸糸を伸び縮みさせ、きりもみ運動で細胞に入り込みます。
この菌が恐ろしいのは、侵入する時に細胞の免疫応答をすり抜けること。
やつらは侵入者でありながらまるで親戚や友達のような顔をして、免疫に排除されずに棲み続けます。
◆お口のなかにもいるトレポネーマ菌
さまざまいるトリポネーマ菌の仲間のなかで、私たちの口に棲みつき悪事を働く細菌が、口腔トレポネーマ菌のトレポネーマ・デンティコーラです。
歯周病原菌のジンジバリス菌やタンネレラ菌とタッグを組み「悪玉3兄弟」を結成するのがこの細菌です。
歯周ポケット内で爆発的に増える歯周病原菌のトレポネーマ菌は、タンパク質分解酵素のデンティリシンをもっています。この酵素は細胞を破壊するだけでなく、免疫細胞マクロファージをだまして食べられないようにやりすごし、細胞内にスルリと侵入する為の毒素です。
また、歯周病原菌のトレポネーマ菌は、この毒素を使って歯周ポケット内で素知らぬふりで生存し続けるだけでなく、マクロファージの働きを抑制します。そして歯周ポケットの上皮細胞をきりもみ運動で突き抜けると歯ぐきに感染、体の血管へも入り込みます。
こうしてトレポネーマ菌は、自分だけでなく、仲間のジンジバリス菌やタンネレラ菌をマクロファージを丸め込むトレポネーマ菌に便乗してからだの血管に侵入し、ベタベタの血管内壁プラークを作ります。こうして動脈硬化症を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞に関わって私達の命を脅かすのです。