「歯を失わないための予防」と聞いて何が思い浮かびますか?
「歯磨き」や「フッ素」などが代表的なものになると思います。
実は「禁煙」も立派な予防になります。タバコが体にいい影響を与えないことは周知の事実ですね。肺がんの原因のイメージが強いですが、口臭の原因になり、歯周病も増悪させます。さらに歯が着色して黄ばんできます。
歯周病は、2001年にギネスブックで「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。 地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない。」と記載されました。
そして、歯を喪失する原因でもっとも多いのは「虫歯」ではなく「歯周病」です。歯周病はC Mなどで歯がグラグラになり抜けてしまうイメージがあると思います。
しかし、短期間でそのようになってしまう人は少なく、8割の人はゆっくりと10年20年かけて進行していきます。歯周病はセルフケアだけでなく、早期発見が重要です。症状が軽い段階で見つけられれば、早くに手を打てるので歯を残せる可能性も上がります。そのためには、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切です。
そんな歯周病ですが、タバコで症状の進行が早くなります。
同年代のタバコを吸っている人と吸っていない人で比較をしたところ、タバコを吸っている人の方が歯周病の症状は重篤だったという研究結果が出ています。ある統計データによると、歯周病にかかる危険は1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っていると4.3倍に上昇し、また重症化しやすくなります。
タバコを吸っていると歯肉の腫れや出血が見た目上抑えられ、患者さん自身が歯周病に気づきにくくもなります。実際に治療を始めても歯肉の治りは悪く(もちろん何もしないでいるよりは改善しますけれど)、手術を行ったとしても効果の現われ方が非喫煙者よりも低いのです。
そのため、歯周病治療専門の歯科医院では、まず初めに禁煙指導は必ずします。禁煙することで、この危険性が下がっていくことも、研究の結果解っています。
「歯周病にかかりやすさ」は4割も減ります。手術後の治療経過も禁煙者は非喫煙者とほとんど差が無くなります。ちなみに他の病気でも、肺癌にかかる危険は喫煙者では非喫煙者の4.5倍ですけれど、禁煙すると4年で2.0、5年で1.6、10年で1.4倍と着実に落ち着いてきます。
まとめ
今回はタバコと歯周病の関係について話しました。タバコを吸う人は、吸わない人に比べて歯周病にかかりやすく、歯周病の進行も早く、歯周病治療を行っても治りにくい傾向にあることが研究で明らかになっています。
「タバコをやめる」という生活習慣の改善も間接的にですが、自分の歯を守ることにつながります。タバコを吸われている方は、この機会に禁煙をされることをお勧めします。