コラム

COLUMN

よく歯磨きをするだけでは、歯周病から人類もペットも守れない

 

 

歯周病は2001年に『地球的規模で蔓延している人類史上最大の感染症』としてギネスブックに公式認定されています。

 

地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない』と記されました。

 

それから20年経った現在も、歯周病の患者数が減少したという報告はありません。 

 

大阪大学大学院歯学研究科の天野敦雄教授によると、歯周病の主な感染ルートは、唾液感染です。 

                     

キスやハグが日常的な挨拶になっている欧米では「歯周病感染の主な原因はキスである」と歯科の教科書にはっきり書かれているそうです。そう断定できるのは、彼らはそれ以外に他人の唾液が口に入る機会を持っていないからです。  

 

ところが日本には、この見解は当てはまりません。

 

ここには異なった食文化が影響しています。日本や中国などアジア諸国では、大皿料理が中心で「直箸」を使うことが多い。パンやコロッケなど自分の食べている物を家族や友人にシェアすることがある。ジュースなどの飲み物もコップやストローでシェアする。この食事のシェアとキスが日本における歯周病の感染のルートです。

 

この唾液感染ルートの中には、一般的に気付かれにくい重要ポイントがあります。

 

今や家族同様と考えられるペット

日本ペットフード協会の調査では2009年の時点で 日本のペット数は2330万頭。また総務省のデータによれば15歳未満の人口は1700万人となっており、出生率の低下に伴い2005年以来、ペットと子供の数は逆転していると言われています。

 

大阪大学の研究室が調査をした結果、ペットのなかでも、犬と猫には人間の歯周病菌と同じくらい、病原性が強い歯周病菌がいることが明らかになっています。

 

つまり、犬や猫にも歯周病があるということです。年を取ると歯周病がふえていくのは、人間も犬も同じです。成犬となり、4歳を過ぎるころから歯周病が見つかりはじめる。やがて7歳の老犬になると、口のなかにはほぼ100%歯周病菌が存在するといわれています。

 

いくらペットが家族同然だとしても、愛犬、愛猫には自分の唇を絶対に許してはいけません。それが愛するペットのため、飼い主であるあなたのためでもあるのだと、

 

天野敦雄教授は、著書「長生きしたい人は 歯周病を治しなさい」(文春新書)に書いておられます。

 

歯周病を治し、新たな感染を防ぐためのポイントは以下の3点です。

 

1,毎日の歯磨き(セルフケア)のレベルアップ

2,定期的な歯科外来でのメインテナンス受診

3,唾液感染を起こさない生活習慣の改善

 

歯周病を克服して、健康寿命を伸ばしましょう。

 

 

 

 

世界で最も蔓延している病気としてギネスブックにも認定されている歯周病。

 

21世紀に入ってその研究が加速すると、脳血管疾患、心血管疾患、がん、骨粗鬆症、慢性関節リウマチなどの原因になっていることが分かってきました。

 

現在、日本人の歯を失う原因の第1位は歯周病(37%)です。その罹患率を年代別に調べると、その年代全体に占める割合は、15歳から24歳が20%、25歳から34歳で30%、35歳から44歳で40%、55歳以上で55〜60%です。[日本歯周病学会H Pより]

 

日本において、国は『健康延命プラン(令和元年5月29日公表資料による)』を出し、健康寿命を2016年の現状より3年以上延伸し、2040年において男女共に75歳を超える目標を掲げていますが、そのプランの「疾病予防・重症化予防」に関する取り組みの中に、「歯周病等の対策の強化」が含まれています。[厚生労働省e-ヘルスネット]健康寿命を伸ばすために、歯周病予防・治療はとても大切なのです。

 

 

歯周病は細菌が原因の感染症。

感染症ならば、新型コロナウイルス(COVID19)のように、ワクチンを打てば治るのでは? 抗生物質を飲めば治るのでは?

 

残念なことに現在、薬で歯周病が完治することはありません。抗生物質を飲むと一時的に症状は治りますが、時間が経つと歯周病原菌は増えて同じ状態になります。ずっと抗生物質を飲み続ければ良いのです・・・が、耐性菌ができて、薬が効かなくなるばかりか、人に有益な細菌まで死滅させてしまい、下痢などの体調不良を招く可能性があるのです。

 

歯周病原菌の研究は進んでおり、歯周病を引き起こす「悪玉菌:レッドコンプレックス」も特定されてきました。最重要菌は、P.g.菌(Porphyromonas Gingivalis ポロフィロモナスジンジバリス)と言われています。その理由は、深い歯周ポケットからP.g.菌がよく見つかるからです。でもこの状況だけでは「P.g.菌が歯周組織を破壊している」という因果関係はわかりません。

 

研究は進み、現在では、「P.g.菌は、常在菌を撹乱することで間接的に歯周組織の炎症を引き起こす(Keystone説)」という考え方をもとに、歯周炎の骨免疫学的メカニズム研究の進展から、『適切な感染防御と骨免疫系の制御を組み合わせることが、特に重篤なヒト歯周炎の治療において有効』という可能性が示されつつあります。このことは歯科医療従事者向けに東京大学医学系研究科の塚崎雅之先生が出版された「骨免疫学:医師薬出版」という本に記載されています。

 

科学の進歩に伴い近い将来『歯周病が薬で本当に治る』日が来るかもしれません。

 

何はともあれ、歯周病は細菌が大きく関わっている感染症で生活習慣病なので、健やかな毎日のために、歯と歯茎の境目を意識した『あなたに合った歯磨きを』、専門家である歯科衛生士さんのアドバイスを参考に、身につけましょう。