コラム

COLUMN

食生活と虫歯や歯周病の関連性って?

 

 

 

ママにむし歯が多いと

赤ちゃんもむし歯になりやすいですか?

とご質問をいただくことがあります。

 

歯の質や歯並び、睡液の性質など、

むし歯のなりやすさに関係する遺伝的なものもあります。 

 

しかし、それよりも、

赤ちゃんが育つ環境に左右されることが多くあります。

生まれてからの家庭での食事や飲み物の与え方、

歯みがきなどの生活習慣が赤ちゃんのむし歯をつくります。

 

むし歯菌はお母さんから赤ちゃんに伝播することが多いので、

妊娠中に食生活の習慣を見直しましょう。

 

また妊娠中の歯周病も胎児への影響が報告されています。

安定期に歯科にて妊婦歯科検診を受け、

むし歯や歯周病があれば早めに治療しておくことをおすすめします。

 

 

 

甘いものや糖質の摂り過ぎにご用心!

 

甘いものを摂り過ぎるとむし歯になりやすいのは、どなたもご存じのことでしょう。

 

これは、お口のなかの細菌が甘いものエサにして増え、

歯垢(プラーク)と呼ばれるかたまりをつくって一斉に酸を出し、

歯の表面を溶かしてしまうためです。

 

では、甘いものの摂り過ぎがむし歯だけでなく

歯肉炎や歯周病にも関係していることをご存じでしょうか。

 

 

 

甘いものや糖質の多い食事の摂り過ぎはむし歯や歯周病、生活習慣病の原因に

 

最近、さまざまな研究により糖尿病と

歯周病が密接に関係していることが明らかにされています。

 

日本歯周病学会が2014年に発行した

『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン改訂第2版』1)では、

糖尿病の患者さんは歯周病になりやすく、

また、歯周病の患者さんは糖尿病になりやすいと指摘されています。

 

実は、糖尿病や歯周病を予防するうえで摂り過ぎに注意すべきなのは、

お菓子やジュースなどの甘いものに限りません。

 

ごはんやパンなどの糖質(炭水化物から食物せんいを除いたもの)は

消化吸収されてぶどう糖(グルコース)となり、エネルギー源になる大事な栄養素です。

 

しかし、摂り過ぎると糖化(グリケーション)と呼ばれる

反応を起こして全身の血管や細胞を傷つけます。

 

つまり、糖は功罪相半ばする「両刃の剣」なのです。

 

このため、私たちのからだには血液中の糖の値(血糖値)を

適正にコントロールするしくみが備わっています。

 

糖尿病は、糖を栄養素として細胞に取り込むインスリンのはたらきや

効きが弱くなり、本来使われるべき糖が使われず、

血液中にあふれかえった状態と考えればよいでしょう。

 

こうして血糖値が高い状態(高血糖状態)を放置してしまうと

血管や細胞が傷つき、炎症を起こして

 

■網膜症

 

■神経障害

 

■腎臓病

 

■動脈硬化

 

■心筋梗塞

 

■脳梗塞

 

■認知症

 

など

さまざまな合併症の原因になると考えられています。

 

 

 

歯周病と糖尿病の関係性とは

 

近年、糖尿病の新たな合併症として注目されるのが歯周病です。

歯周病もまた、甘いものや糖質の摂り過ぎによる

高血糖状態が歯肉の血管を傷つけて起こる糖尿病の合併症の1つといえます。

 

甘いものはつい食べ過ぎてしまいがちです。

市販のケーキやファーストフードなどには、

おいしさを高めるために糖分だけでなく脂質が多く含まれています。

 

ひと口食べると、もっともっと欲しくなるのはこのためです。

こうしてついつい病み付きになって食べ過ぎ、

健康へのリスクが増えることが懸念されます。

 

甘いものは適度に楽しみ、けっして摂り過ぎないと決める必要があります。

 

 

WHO(世界保健機構)は、糖の摂取量を

 

1日の摂取カロリーの10%以内、

できれば5%以内にとどめること

 

が生活習慣病の予防につながると提案しています2)。

 

 

目安としては、お菓子やジュースなど甘いものは

1日1回片手にのるぐらいに制限することが勧められています。

 

意外な落とし穴は、手づくりの家庭料理でもおいしく食べられ、

保存がきくように砂糖やみりんなどで甘く味つけすることが多いことです。

食事だから」と油断すると糖の摂り過ぎにつながることもあることを、

頭の片隅に置いておいてください。

 

1日3度の食事で主食のごはんやパンなどの糖質を控えめにし、

主菜、副菜をバランスよく食べ、甘いものは

少しで満足できるように舌をならしていくとよいでしょう。

 

こうした食生活を送ることが、むし歯や歯肉炎、

歯周病、生活習慣病を予防するうえでとても大切な心がけといえます。

 

■参考文献

1) 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン改訂第2版2014 日本歯周病学会編

2)WHO Sugars intake for adults and children Guideline