~自宅や施設での口腔ケアに不安を感じたら~
高齢の親御さんや、介護が必要なご家族の口のケア。気になりつつも「歯医者に連れて行くのが大変」「どこに相談したらいいかわからない」と悩まれていませんか?
そんなとき、頼りになるのが「歯科訪問診療」です。
今回は、初めての方でも迷わず進められるよう、歯科訪問診療の依頼の仕方について3つのステップに分けて解説します。
そもそも「歯科訪問診療」とは?どんな人が対象?
歯科訪問診療とは、歯科医院のスタッフが自宅や施設に訪問して、診察や治療を行う医療サービスです。高齢や病気、障がいなどが理由で通院が困難な方が対象で、要介護認定を受けている方のほか、一時的に歩行が難しい方なども含まれます。
対象となる主な症状や希望には、次のようなものがあります。
- 入れ歯が合わない、外れてしまった
- 口の中が痛い、腫れている
- 食べ物が飲み込みにくくなってきた
- 口臭が強くなった、歯磨きが難しくなった
「こんなことで相談してもいいのかな?」と感じるようなことでも、まずは問い合わせてみることが大切です。放っておくと、誤嚥性肺炎など命に関わるトラブルにもつながりかねません。
まずは電話から。歯科医院への依頼の仕方
訪問診療を行っている歯科医院は、地域によって異なりますが、「訪問歯科」や「在宅歯科」といった言葉でインターネット検索すると、比較的簡単に見つけることができます。自治体やケアマネジャーを通じて紹介を受けることも可能です。
依頼の際に伝えるべき主な内容は以下の通りです。
- 患者さんの氏名・年齢・状態(要介護度や持病の有無)
- 現在困っている症状や要望(入れ歯の調整、口腔ケアなど)
- 訪問先の住所・施設名・連絡先
- ご家族や介護者の立ち会いが可能かどうか
初回の電話では、スタッフが丁寧にヒアリングを行い、必要に応じて医師や衛生士が訪問日を調整してくれます。保険証類やお薬手帳の準備を求められることもありますので、事前に確認しておくとスムーズです。
費用や準備は?初回訪問の流れ
訪問歯科診療の費用は、健康保険・介護保険の両方が使えるため、多くの場合、自己負担は抑えられます。負担割合やサービス内容によって異なりますが、1回あたりの費用はおおむね1,000円〜3,000円程度です。
初回訪問では、以下のような流れで診療が行われます。
- 全身状態や生活環境の確認
まずは全身の健康状態や生活背景を把握するための問診があります。
- お口の中の診察
虫歯や歯周病の有無、入れ歯の状態、口腔の清潔さなどをチェック。
- 治療やケアの提案
必要に応じて治療内容を説明し、今後の訪問スケジュールなども相談。
治療器具はすべて持参してくれるため、特別な準備は不要ですが、できれば静かで明るいスペース(ベッドや車いすのままで構いません)を用意しておくとスムーズです。
おわりに:迷ったら、まずは相談を
歯科訪問診療は、「寝たきりになったら使うもの」と思われがちですが、実際には、少し歩行が不安な方や、認知症の症状が出始めた方など、幅広いケースに対応しています。
家族としてできることは限られていても、専門家の力を借りれば、今よりずっと快適で安心な日々を送ることができます。
「今はまだ大丈夫」と思わずに、気になることがあれば、まずは一度、地元の歯科医院に相談してみてください。それが、ご家族の健康を守る第一歩になるはずです。