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歯科の災害保健医療支援(その3 避難生活について)

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(参照:nico2018.8月号)

 

被災時の生活は、家屋の損傷やインフラの停止などで自宅に住めなくなった場合、避難所で生活します。余震が怖くて、仕事して家に帰らず、避難所で寝泊まりするパートナーもおりました。親戚の家から出勤したり、犬や猫を飼っていたり、子供がいる場合、自宅で生活し、車中泊やテント生活をしていた人もいます。

このような状況で心配な病気は、感染症です。下痢などのウイルス性のものは一気に広まります。加えて、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化を原因とする循環器系疾患も侮れません。

避難生活では、水分が不足しがちなのと、狭いところに長時間同じ姿勢で運動できないことで、体内に散らばった血栓が血管につまる「エコノミークラス症候群」が心配です。車中泊の方に見られやすいといわれています。

 

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(参照:nico2018.8月号)

 

 

熊本地震の災害関連死の統計では、肺炎を含む呼吸器系疾患が約3割、心筋梗塞などの循環器系が約3割を占めています。災害時の統計は出ていませんが、高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥によるものといわれています。

そして、この災害関連死の割合が、そのまま病気にかかった方の割合を表しているものではなく、ご遺族からの申請を受けて、委員会の検討の上認定されるものです。

疾病にかかっても、回復された方は入らないし、身寄りのない方もカウントされていません。

なので、この図は、被災時に起こりがちな病気の全体像として捉えるとよいものです。

ということで、災害歯科医学の領域では、「災害関連死」より「災害関連疾病」を減らすことが大事と考えられています。災害関連疾病は、避難生活の影響で起こる病気です。これを予防することで、関連死も防ごうという考えです。

たとえば、誤嚥性肺炎は、お口の中で繁殖した細菌が、誤って肺に入ってしまって起こることが多く、お口が清潔に保たれ、飲み込む機能が維持されれば、かかりづらくなります。反対に、お口の健康が悪化し、食べられなくなると、体力は低下し、いろいろな病気にかかりやすくなります。

そのような理由で、災害時の歯科の保険医療支援活動のひとつとして、お口のケアやお口の体操が重視されます。

避難生活では、今後の不安や置かれている状況に戸惑い、「それどころじゃない」となりがちです。しかし、お口の健康は災害時こそ重要性を増し、「それどころ」なんです。

 

次回は「避難生活でのお口のトラブル」です。